副題にある「ソフトウェアリーダー」というのは、「ソフトウェアに関するリーダーシップを発揮する人」を指している。 この本のはじめに書いてあるように、この本の対象者はアジャイルを導入しようとしている経営層や組織の長などと書いている。 つまりそういった人たちがソフトウェアリーダーということなんだと思う。 そういった読者のために、「アジャイルとは何か」ということを解説している本ではない。 むしろ、アジャイルを導入するために彼らソフトウェアリーダーがどういったことをすべきか、といった内容だった。

スティーブ・マコネルの長年の経験から書かれている。 彼はアジャイルコーチといった立場ではなく、ソフトウェア開発の現場を支援する立場として実践的なことを書いているように感じた。 この本にあるように

本書は、アジャイルを「正しく」行う方法ではなく、各自の業務に適したアジャイルプラクティスからできるだけ大きな価値を引き出す方法について書かれている。

「Part 3より効果的な作業」までは、実際にスクラムを実践するチームにとっても参考になる話になっている。 そこから先は、ソフトウェアリーダーに向けて書かれている内容になっていた。 ソフトウェアリーダー向けだからといって、現場の人たちも読むべき部分であると思う。 それは単に今後のキャリアのため、ということではなく、ソフトウェアリーダーにどういったことを期待したらいいのかといった指針になると思う。

読んでみて、実践した中で得られた知見がとてもまとまっている本だと感じた。 アジャイル開発(この本だとスクラム)を導入し実践すると直面するであろう問題について書かれている。 例えば、大規模なプロジェクトについては、安易にスクラムを取り入れればうまくいわけではなく、非常に難しいことが読み取れる。 また、単に著者の経験のみから結論付けられているだけでなく、他の事例や研究成果からの裏付けもされている。 参考文献にまで手を出していくとかなり勉強になりそうだ。

普段からスクラムを実践している人たちが読んでも面白いのだろうけど、やはりタイトルにもある通り、ソフトウェアリーダーに読んで欲しいと思った。 そういった人たちの中には「スクラムに関する本はたくさん読んだ」と言う人もいるかもしれないが、「Part 4より効果的な組織」だけでも良いので読んで欲しい。 スクラムについて理解することだけではなく、ソフトウェアリーダーと呼ばれる人たちの積極的な支援が無ければアジャイル開発の導入はできないということがわかるのではないだろうか。 各章の最後に「推奨リーダーシップアクション」といった項目があり、そこで具体的にどういったことをすればいいのか書いてある。 口酸っぱく書いてある「検査と適応」が出てくる。 スクラムチームだけでなく、経営層もアジャイルに取り組まなければいけないということだ!

この本の「おわりに」の最後の一文がとても好きで、きっとここにこれから実践する人たち後押しするメッセージが含まれていると思う。

アジャイルを堪能しよう!

この本もオススメ

これから組織としてスクラムを実践する人たちは、パイロットプロジェクトとして始めるスクラムチームの人たちには「Scrum Boot Camp The Book」を、そしてその活動を支援するリーダー達には「More Effective Agile」を手にとって欲しいと思った。